A.山歩き/2.山紀行/・・笹森山
秋田・笹森山




ーコバイケソウの向こうにたたずむ笹森山ー

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乳頭スキー場から笹森山(05-07-13歩く)
笹森山は秋田駒ケ岳の隣の山である。正確には一部かもしれない。今は駒ヶ岳の八合目までバスが通っていて、駒ケ岳は右に、笹森山は 左に登るが、ほとんどは駒ヶ岳の方に行く。また、駒ケ岳から乳頭山の方に縦走するとしてもこの笹森山は縦走路から外れている静かな 山である。
実は実家に比較的近い駒ケ岳、乳頭山は私の山歩きの原点の山である。この度たまたま実家に帰っていて、いつものように 乳頭キヤンプ場のブナの写真でも写そうかと思ったが、もう少し他のところはないものかと、本屋に行って山と高原地図「岩手山・八幡平・秋田駒」 を買って調べてみた。ずいぶん昔に比べて登山コースも多くなっていた。その中で、目を引いたのは「ブナ原生林・ブナ樹林帯の静かなコース」 と地図に書き込みのある乳頭スキー場からの笹森山へのコースであった。早速、このコースを登ってみることにした。

丁度、入梅時、乳頭温泉郷は閑散としていてほとんど車も通らない。実家から1時間ほどで乳頭スキー場の大駐車場についた。車は 一台も駐車していない。駐車場の簡単な案内板にもこのコースがかかれいて、スキーリフトの終点から笹森山へと延びている。スキー場 のリフトの乗り場付近に道標があるかと探したが見当たらない。兎に角、リフトに沿ってスキー場のゲレンデの薄い踏み跡を登って行く。 約20分ほど登ると林縁に道標が立っている。スキー場の方を指して、休暇村とある。笹森山の字は見当たらないが、左斜めに広い道が 樹林帯の中に入って行っている。
どんよりと曇ったお天気で日差しは入り込んでいないが、下生えの熊笹の上にブナの大木が林立する明るい 雰囲気のブナ林である。平坦な坦々とした プロムナードのブナの散歩道が続く。足元には沢山のギンリョウソウが顔を出している。やがて、せせらぎの音がして、両側、沢に挟まれた不思議な尾根道を行く。 樹林帯入口から15分ほど歩くと右の沢は離れ、左の沢は滝となって上の斜面に消えて行っている。
この辺から緩やかに登り、時々ブナの大木も混じる ブナの二次林の林立した美しい道を登って行く。これが延々と続く。新緑、黄葉の頃はおとぎの森のような雰囲気ではないかと思わせるところである。 樹林帯入口からブナ林の中の道を50分ほど歩くと道は平坦になり、ようやく左の樹間から谷の向こうに尾根の風景が見えてくる。 この道を10分ほど歩くと左のピークを巻くように溝の深い荒れた道があったりする本格的な登りとなる。そして、道にモミジカラマツ の白い花が現われだすと道の傾斜はゆるみ、樹間から右手前方近くに笹森山が仰ぎ見えてくる。樹林帯入口から約1時間20分である。
道は笹森山を左に巻くように緩やかに登って行く。周りの木々は潅木となり、ますます道にはモミジカラマツが多くなる。 今まではブナ林を楽しませてもらった。今度はどういう花が咲いているか楽しみにして登って行く。濃いピンクのウツギの花、 オオバキスミレ、ハクサンチドリが道端に咲き、楽しませてくれる。道はところどころガレ場を通過しながら左に巻き、笹森山の肩に 向って登って行く。そうすると、コイワカガミ、予想もしなかったニッコウキスゲ、ヨツバシオガマ、シシウドを小型にしたような ハクサンボウフウ(?)などが見られるようになった。そして、駐車場から2時間30分かかって笹森山の肩、すなわち湯森山分岐に着いた。
右手になだらかな笹森山が見える。山頂付近には黄色いニッコウキスゲが点在している。5分も登ると秋田駒八合目・笹森山分岐と なり、左手の秋田駒の方の眼下には木道が伸び、コバイケソウやニッコウキスゲの群落が見える。そちらには帰りに寄るとして、右手上の 笹森山の方に登って行く。
道の脇には、ハクサンチドリ、コイワカガミ、チングルマ、ヒナザクラ、イワイチョウ、コバイケイソウ、ニッコウキスゲ、 ベニドウタンツツジ、ヨツバシオガマ、アカモノなどが咲いている。ゆったりと巻きながら山頂に上がると這松の中に 小柄なシャクナゲも咲いている。予想以上に花が豊富である。ブナは期待していたが高山植物は期待していなかったので幸せな気分になる。 誰もいない山頂から周りを見渡す。ガスが周りの峰々に垂れ込め遠くの視界は効かない。眼下に縦走路がガスの中に伸びて消えて行って いる、歩いている人はひとりもいない、本当に静寂の笹森山である。
この後、木道の方のコバイケソウ、ニッコウキスゲの群生地によってみることにする。 秋田駒八合目・笹森山分岐から右に曲がると木道となり、右側にはコバイケソウが群生し、その先にはニッコウキスゲが群生している。 振り返るとコバイケソウ、ニッコウキスゲの彼方に笹森山が静かなたたずまいを見せている。 木道は右方向に廻り込み消えている。平坦なようなのでどんな風景があるか行って見る。そこもニッコウキスゲの群生地であった。コバイケソウも点在し、彩り を添えている。左手眼下には池や残雪も見えた。150〜200m位でニッコウキスゲの咲く木道は終わり、階段が下っていたので、そこまでとして、引き返すことにした。
帰りは高山植物を惜しみながら愛でながら下った。樹林帯に入っては、ブナ林に差し込む光の具合が登る時と違って、また別の表情を見せてくれている。 十分時間がある、思う存分写真を写し、手前味噌であるが、つくづくと我がふるさとの山はいいなぁ〜と思い、幸せな気分で山歩きを終えた。


(コースタイム)
乳頭スキー場駐車場(P)6:30−スキーリフト終点(樹林帯入口)6:53−滝7:10−左に樹間より尾根が見える7:44− 樹間より笹森山が見える8:18−笹森山の肩(湯森山分岐)9:00−秋田駒八合目・笹森山分岐9:06 −笹森山山頂9:16〜18−秋田駒八合目・笹森山分岐9:13−秋田駒八合目方面ニッコウキスゲ群生地9:44−秋田駒八合目・笹森山分岐 10:02−笹森山の肩(湯森山分岐)10:07−スキーリフト終点(樹林帯入口)11:56−乳頭スキー場駐車場(P)12:14

(地図)
・昭文社 山と高原地図 「岩手山・八幡平・秋田駒 2005年版」