A.山歩き/2.山紀行/・・王岳

王 岳



鍵掛峠からの富士山

王 岳(05-09-10歩く)
王岳、以前富士山周辺の地図を調べていて、立派な名前の山があるもんだなぁ、と思っていたが、その後すっかり忘れていた。 そろそろ秋の山、どこへ登ろうかと山渓の「ブナの山旅」という本を調べていて、王岳を発見。こんな近くにブナ林があるなら 見てみようと出かけてみた。
富士山周辺の山へ出かけるときは富士山が今日は見えるか気になる。車を走らせての道中、 相模川にかかる橋、東名の足柄SA、東富士五湖道路などで富士山を確認するが、見えない。 まあ、ブナ林があるからいいことにいしょうと、慰めながら車を登山口の西湖・根場の神社を目標に走らせる。
139号線を走り、西湖の標識に従って右折する。道なりに北の方に行くと西湖湖畔の北側の道にぶつかる。それを右折して少し行くと 橋の手前に十二ケ岳・鬼ケ岳登山口の道標を見つける。鍵掛峠・王岳登山口も同じ方向だろうと、それに従って左折して川沿いの狭い道 を行くと十字路となる。真っ直方向を指して十二ケ岳・鬼ケ岳登山口という道標がある。兎に角それに従って行ってみることにする。 そこからは少し荒れた林道となる。道なりに5分も行くと林道終点の堰堤工事の広場となり、道標が立ち雪頭ケ岳とある。
どうも昭文社の山と高原地図「富士・富士五湖」の東入沢の方に来てしまったようだ。いつかは雪頭ケ岳にも登ってみたいと思っていたので、 少し回り道をしたが、登山口がわかってよしとする。地図からすると鍵掛峠・王岳登山口の神社は十字路まで戻り、右折するとよさそうである。 そのように十字路を右折して道なりに2,3分も行くと鍵掛峠・王岳・鬼が岳の道標が立っていて、林道が右に分岐している。 その角には神社があり、駐車スペースも一台分くらいあったので、そこに車を置いて身支度して林道を登って行く。
林道は大きく稲妻形に折り返しながら緩やかに登っており、タマアジサイ、ツリフネソウが多い。20分も歩くと鍵掛峠・王岳・鬼 ケ岳・十二ケ岳の道標が立ち、山道が右の雑木林に入って行っている。赤松の混じる雑木林の山道を緩やかに15分も上って行くと、林の外に出て、 真新しい堰堤を左に見て沢沿いの道を登って行く。右斜面には植林を鹿などの食害から保護するためのおびただしい数の白っぽいプ ラスチックの四角い筒が並んでいる。
そのうち、山道は沢から離れるように斜面を急登し、ある高度に達してからは大木の林立する 見通しの効く好ましい自然林の広い斜面を稲妻状にゆったりと登って行く。大きな大きなカラカサタケなども生えている。 なかなか紅葉のころはよさそうなところである。10分弱ほど上ると、まばゆいばかりの朝の斜光が林立する木々の影を長く描いている尾根に到達する。
山道は最初尾根沿いに真っ直ぐであったが、そのうち尾根の傾斜がきつくなりジグザクを繰り返しながら上って行く。上がるに従って道端にヨメナ、ハクサンフウロウ、 トモエシオガマが多くなる。こんな木々の日陰に、どうしてフウロウが咲くのだろうと思う。また、草原のものより背丈が高くひょろひょ ろしているトモエシオガマが目に付く。尾根に取り付いて30分弱登ると、ブナ原生林という標識が現われ、林立とまではいかないがブナが多くなる。
さらに登って行くと、上部に石仏がはめ込まれている見上げるような大きな岩に出会う。 この上あたりからブナの大木が多くなり、ブナの立ち枯れも目に付き、その立ち枯れの樹間から鍵掛峠の尾根も見えてくる。そして、山道も明るくなり、ヨメナが群生し、ハクサンフウロウ、トモエシオガマ、 オヤマボクチ、触ると痛いホソエノアザミなど、花が多くなる。
だいぶ高度も稼ぎ、そろそろ峠かと思う。ふと後ろを振り返ると交錯する木々 の枝のシルエットの向こうに雲海から顔を出している富士山が見える。今日はダメだろう、と思っていただけに胸がときめく。早く見晴らしの よい峠に行かなきゃ、と気が急く。ところがそこから結構あって13分ほど登ってようやく稜線に到着した。そこには右、 鬼ケ岳・十二ケ岳の道標があった。この分岐は道標があるだけで見晴らしが効かない。左に少し下ると鍵掛峠の道標が立ち、富士山側が大きく開け た峠らしくない見晴台みたいなところに降り立った。
富士山はどうだろうかと気になる。富士山が雲海を裾にたなびかせながらシルエット状にクッキリと見えてホッと する。そして、雲のかからないうちにと夢中で写真を写す。一通り写し終わって雲海の下を見ると西湖の南端が山の陰で区切られ、まるで 別の小さい湖のように光っている。
この後王岳へ向う。鍵掛峠から山道は右に少し降りて左に巻きながら尾根に戻る。 昭文社の山と高原地図では十字路となっているが、荒れて廃道になったのであろうか、芦川村の方に下る道は見当たらない。これより ブナの混じる雑木林を一旦下り標石のある鍵掛に上って行く。見晴らしはほとんど効かず、ところどころに立つブナの大木や足元のトリカブト、 ヨメナ、数は少ないがサラシナショウマに舞うアサギマダラ、などを愛でながら登って行く。25分ほどで1589mの標石のある鍵掛に着く。
ここより先も、王岳らしきピーク(王岳の一つ手前のピーク)の手前まで、アッププダウンを繰り返しながら同じ様な風景が続く。 しかし、富士山の見えるところが4箇所ほどあり、時々見える富士山が蒸し暑さとアップダウンでの疲れを癒してくれる。やがて大きく下り、前面に見えるピーク を目指して左側に富士山を見ながらあえぎあえぎ登って行く。これで終わりかと思ったが、峠からまだ1時間を少し過ぎたくらいで 王岳にしては少し時間的に早いようにも思われた。案の定、黒木の疎林のピークには道標も無く、向こうにはもう一つの山が見える。 王岳という名前だけあってなかなか近づけさせてくれない。
このピークあたりから黒木が多くなり、高山の雰囲気となる。 折角登ったところを一旦下り、さらに次のピーク目指してこれが最後と頑張って登る。登りきったところは広葉樹の自然林でブナの大木も多い。 すぐ王岳かと思っが、道標はなく、好ましい樹林の平坦な道が続く。そのうち行く先が明るくなって、左側が潅木で開けた明るい道にでて、まもなく 刈り込まれた広場の王岳の山頂に着いた。
展望は富士山方向だけであるが、生憎ガスに覆われ見えない。 ガスが切れないかと、時間稼ぎにまだ昼食には早かったが、昼食とする。それでもガスは切れない。途中また見れるかもしれないと 戻ることにする。
帰りの道は、一通り見た風景、アップダウンにうんざりしながら黙々と行く。時々見える富士山の写真を写しては 息抜きをする。ようやく、1時間半かかって鍵掛峠に着く。これからは下り一方なので楽かと思ったが、本当にこの日は蒸し暑い日で、下るにしたがって暑くなり、 滴る汗に往生しながら下り、無事山歩きを終えた。家に帰ったら光化学スモック解除の放送が町に流れていた。本当に暑かった日だったようだ。


(コースタイム)
自宅4:47==東名厚木IC==御殿場IC==東富士五湖道路・河口湖IC6:24==根場・神社(P)6:55〜7:07==登山口7:27−堰堤7:42−尾根取付点 8:12−ブナ原生林標識8:39−石仏8:45−鍵掛峠(鬼ケ岳分岐)9:09〜17−鍵掛(標石)9:42−王岳一つ手前のピーク10:38−王岳11:05 〜25−鍵掛(標石)12:32ー鍵掛峠(鬼ケ岳分岐)12:55−ブナ原生林標識13:13−尾根終り13:36−登山口14:07−根場・神社(P)14:25

(地図)
・昭文社 山と高原地図2001年版「富士・富士五湖」

●特記事項
根場から鍵賭峠への道は手前の方で地図と違っています。地図では本沢川をかなり上流で横切り、水場もあるように書かれていますが、 実際は林道から山道に変わる地点から左岸(上流から見て左)沿いに行きまして、かなり手前から右上の尾根に取り付いているようです。 したがって、水場はなしです。ただし、「1/25000地形図」「20001年版の山と高原地図」と実際との比較においてです。
駐車スペースは 神社の周りの道路にもあります。交通の妨げにならないように置くといいと思います。