A.山歩き/2.山紀行/・・乳頭温泉郷自然歩道


乳頭温泉郷自然歩道


鶴の湯と蟹場の間の名残りの紅葉


乳頭温泉郷自然歩道(2011-11-05歩く)
乳頭温泉卿は子供のころから父に連れられて湯治によく行ったところであり、私の山登りの原点のフィールドである。そんなことで、鶴の湯、蟹場、黒湯などは断片的に何度となくいっている。 しかし、それらをつないでぐるりと廻ったことはなかった。随分以前であるが何かのガイドで周回のコースがあることが紹介されていたのを思い出し、今回、実家に行ったついでに歩いてみた。

車で田沢湖高原へ上がってゆ くと手前の水沢温泉あたりが紅葉真っ盛りである。この上の乳頭温泉郷はこの分だともう紅葉が終わっているかもしれないと思うが、落葉したブナ林にところどころに遅いモミジが点在している風景もいいものである。 そういう風景を期待して登って行く。予想通り、到着した鶴の湯温泉旧道口バス停付近のブナ林はすっかり葉っぱを落としている。
車を置いて鶴の湯峡への道標に従って、整然と並ぶブナの二次林の道へ入ってゆく。 振り返ると銀細工のように逆光に白く輝くブナの梢と、林間に散りばめられた赤褐色の残り葉の輝きが実に美しい。すぐ杉林となり、緩やかに下ってゆくと、落葉した明るいブナ林の高台にでて、眼下に遠く、鶴の湯のある森が広がっている。
ここからブナ林の急斜面の落ち葉の稲妻道をかさこそと下ってゆく。踊り場のような所に降りると、今度は眼下に心地よい瀬音響く鶴の湯峡の渓流が見える。ブルーの流を目指して降りて吊り橋を渡り、ブナ林にモミジの残っている斜面を鶴の湯峡展望台へと登り返す。
そこから杉の林を抜けるとツアールの森の丁字路に突き当り、左別館湯の宿、右鶴の湯温泉とある。左に高木のブナ林の広い窪地を見ながら回り込んで行くと、やがて、樹間に鶴の湯温泉の建物が見えてくる。蟹場への道は鶴の湯神社の裏手から始まる。しばらくブナ林を行くと蟹場方面の道標が現れ、それに従って右下に降り、 そして堰堤の下の橋を渡って杉林の斜面に取り付く。
今までの明るいブナの道と打って変わって薄暗い杉林のうんざりするような急登である。 この先、登りきったところにいいことあるだろうと期待して登ってゆく。大きな稲妻道になると、やがて、ベンチのある駒見峠に着く。 秋田駒が梢の間から見え、郷愁を誘うような峠風景であるが、ごちゃごちゃした梢が惜しい。ここかからはカラマツの黄葉が混じる雑木林のトラバース道を行く。 時々僅かに開け秋田駒が見えたりする。派生尾根を乗り越えると、風景が一変し、ブナ林の斜面のトラバース道となり、残り紅葉と巨木のコラボや銀細工のように光るブナの梢が素晴らしく、写真撮影したりして道草する。
しばらく、晩秋のブナ林を楽しみながら行くと、また、派生尾根に至る。そこには「ブナ森台」という標識があった。またまたここから、林相が変わり、ダケカンバやカラマツ、サワグルミのような木が混じる斜面のトラバース道を行く。 しばらく行くと、今度は杉の植林地となり、下りだす。そろそろ蟹場かなと思うが杉林の道は意外に長い。そうこうしているうちに広葉樹の茂る沢に降りて、 何回か流れを渡ると、車道に飛び出した。そこは見覚えのある蟹場と大釜の湯の間の舗装された車道であった。
ここから右に少し行って 孫六の湯への道に入ってゆく。この道は冬に写真撮影で何回か通った道で渓流沿いの道である。 冬は渓流の河原に点在する岩に雪が餅のような形に積り情緒があったが、今は、ブナ林は落葉し、瀬音が周りの山に響きわたる晩秋の静寂の風景であった。やがて秘湯の孫六の湯が見えてくる。昔と変わらぬ湯けむりの立つ山の湯で、 懐かしい。こういう雰囲気をいくらかでも長く浸りたいと思い、コンビニで買ってきたおにぎりを広げランチタイムとする。
ここまで来るともう黒湯も目の前である。渓流の橋を渡ると黒湯の屋根が見えてくる。ここから、ブナ林の湿原を通って休暇村に向かうつもりでいたが、車道から湿原に向かう山道の入口がわからない。テープが入り乱れていて二回もらしきところに入ってみたが 違うようで車道に戻り、結局、車道を休暇村まで下ってしまった。ここの車道の周りのブナ林は整然として素晴らしいが、今にも雨が降りそうな 暗い空で、その良さが引き立たないのは残念であった。
休暇村から乳頭キヤンプ場へは、玄関の前の遊歩道を池の方に入ってゆく。 池を過ぎると、乳頭スキー場のゲレンデに飛び出す。ここはリフト乗り場に向かって野原を突っ切ってゆく。リフト乗り場のすぐ上に、広い遊歩道がまっすぐ森の中に入っている。この入口には角柱の道標 があり、左笹森山とあるが、乳頭キヤンプ場への案内がない。ここのブナの森もいつもだと素晴らしいが、今は薄暗く見栄えがしない。今にも 雨が落ちてきそうで、早くスタート地点にたどり着こうと、ただただ黙々と歩く。
20分ほどでキヤンプ場に着く。広い車道をキヤンプ場入口 の方の右に行くと、「鶴の湯」の手製のプレートが打ち付けられている分岐となる。ここは左の車道に入り、緩やかに下ってゆく。やがて右にカーブするあたりにまた「鶴の湯」の手製の道標が現れる。そこからブナ林の山道を下ってゆくと、 今朝ほど駐車した鶴の湯温泉旧道口バス停が見えてくる。


(地図・ガイド)
・昭文社 山と高原地図「岩手山・八幡平・秋田駒」
略図

(特記事項)
・鶴の湯温泉旧道口バス停から鶴の湯峡、鶴の湯へは道標完備しています。
・空吹湿原は黒湯側からの入口探しましたが不明で、今回は省略しました。
 休暇村側からだと以前歩きましたが、道標もありはっきりしています。
・鶴の湯温泉旧道口バス停には10台位の駐車スペースがあります。

(コースタイム)
鶴の湯温泉旧道口バス停(P)9;38--鶴の湯峡吊り橋9;55--鶴の湯10;24--駒見峠10;59〜11;04 ブナ森台11;37--蟹場温泉手前車道12;02--孫六の湯12;20〜27--黒湯12;32〜57--休暇村13;20--スキー場の乳頭キャンプ場への歩道入口 13;26--乳頭キャンプ場13;45--鶴の湯温泉旧道口バス停(P)13;54



鶴の湯旧道口付近のブナの美林





銀細工のようなブナの梢 鶴の湯と蟹場間にて





孫六の湯





黒湯から休暇村への道


Canon EOS 60D / EF-S18〜135mm IS にて撮影