A.山歩き/2.山紀行/・・猫越岳

天城・猫越岳
〜 霧のブナ林とアセビのトンネル 〜



アセビのトンネル

仁科峠〜猫越岳〜ツゲ峠(06-03-02歩く)
昨年、湯ヶ島から仁科峠に上がり猫越岳に登ろうと出かけたところ、持越鉱山の先が 土砂崩れのため交通止めであった。仕方ないので七滝や河津桜を見て帰ってきた。ということで二度目の山行である。
最近の天気 は冬と春の攻め合いで安定しない。ようやく天気予報で伊豆地方は晴れとでたので、信じて5:30頃自宅を出発する。段々明るくなって 現われたのは今にでも雨でも降ってきそうな空である。それでも信じて熱函道路を経て、函南で136号線の有料道路のバイパスに入り、それから 414号線へと行き、湯ヶ島温泉の看板にしたがって右折して、道なりに持越鉱山の方に行く。
持越鉱山を過ぎると登りにかかる林道である。 夕べは相当風雨が強かったようで、ところどころに、杉の枝が落ち、アスファルトの道の上を水が流れている。 どんどん上がり仁科峠に差し掛かると雨は降っていないもののガスって10m先は見えないくらいである。 この持越林道の交わったところが仁科峠と思って、駐車スペースと登山口を探して、付近を行ったり来たりするが見つからない。 ここで地図を見る。そうしたところ仁科峠はもっと上の南の方であった。車窓を流れる幻想的な濃霧のなかのブナの大木がすばらしい。 そうだ、今日はこの写真を撮ろうと決める。直ぐ見覚えのある駐車スペースのある登山口に着いた。
身支度して笹の原の広い道を登って行く。5分も登ると展望の良いところに到達する。しかし、ガスって何も見えない。道は下り、 牧柵に突き当たる。2ケ所の柵のパイプを外して進んでゆく。やがて伊豆の山らしいアセビのトンネルを行く。
アセビのトンネルの道は幻想的に霧の彼方に消えていっている。自分はどこへ行こうとしているのだろうか、という錯覚に襲われる。 そして次から次へと、雨で濡れてしっとりとした褐色の形の良いアセビの古木が現われる。少し行くといよいよ丸太の土の流れ止めした 階段の登りとなる。戻りに分かったことだが階段は後藤山の左側をトラバース気味に登っている。延々と階段が続く。 だいぶ登り右にカーブしだすと、待望のブナが現われだす。
道は平坦となって、後藤山に達し、ブナの大木も多くなる。 アセビの葉っぱの緑とブナの幹と繊細な枝のシルエットが霧のキヤンバスに映し出され、霧の彼方から次から次へと現われる。 先の見えない道をブナやアセビに導かれながら進むようである。やがて少し下り上り返してアセビの曲がった木立ちの美しいところを急降下する。 そして鞍部に達し、この後、アセビに時々ブナの混じる道を緩やかにアップダウンを2回ほど繰り返すと、道標の立つ鞍部にまた達する。 だんだんガスが切れて明るくなり、世界が変わったようだが、雨に濡れてしっとりとしたアセビの林立は美しい。
ここから猫越岳目指して急登が続く。左手にブナと アセビの大木が見えてきてさらに5分も登ると展望台 分岐となる。この分岐の直ぐ右手が展望台である。展望台に立つと、眼下に今しがた登ってきた尾根が見える。尾根の右手からガスが上がってきては尾根筋で左からの 風で押し返されている。左を見ると松崎あたりの海岸であろうか、ガスの間から光ってみえる。ここがこのコースで最も展望の良いところである。 また、分岐に戻って猫越峠の方へ先に進む。
直ぐまた火口湖の道標となる。帰りに寄ろうかと思ったが、右手をみると木々の間から白い 看板らしきものが見える。近そうであるので行って見る。この火口湖は伊豆半島が海底火山の噴火で海面に姿を現した250万年前ころできた、と説明看板にある。 250万年後の姿を、今、見ていることを思うと感慨無量である。また、火山湖をとり巻くアセビもブナもその長い時間の中で引き継がれ、今があるのを思うと畏敬の念を覚える。
火山湖入口に戻り、猫越峠の方へ猫越岳目指してアセビの綺麗な道を登って行く。また、ガスがかかってきて、左側の噴火口のような窪地からブナの 巨木が姿を現した。後藤山の山道に点在するブナは序曲に過ぎなかった。霧の中に巨大なブナが林立し、下へ下へと伸びて霧の中に 消えて行っている。左側のブナを一通り写してわずかに登ると、アセビのトンネルの先が明るくなり、標柱が立っているのが見えてくる。そこは 三角点のある猫越岳であった。看板があり、「猫越岳、ねっこだけーー250万年前に海から姿を現し、激しく噴火した 火山です」とある。
ここから猫越峠まで、本当は続いているのかも知れないが、4ケ所ほどブナ林が小ピークを挟んで存在している。天城山域のブナは万三郎・万二郎あたりが最も密度の 濃いところであると思っていたが、むしろこちらの方ではないかと思った。それに万三郎・万二郎あたりは下草が笹であるが、ここのは 笹が衰えたのか少なく、風景的にもすっきりして美しい。しかも標高1000mの低山である。本当に驚きであった。
そして、ブナを見て写して道草して、やっと猫越峠に二時間かかってたどり着いた。ここまでで良かったが、 ある雑誌で見たツゲ峠の写真がすばらしかったので、ツゲ峠まで足を延ばしてみることにする。
猫越峠から左に折れ、もうブナもお仕舞いだろうと思いながらピークの 左斜面を巻きながら行く。そのうち、右斜面にブナ林がでてくる。今までは見下ろすブナ林であったが、今度は見上げるブナ林で感じが 違う。ブナ林は見上げるほうがなんとなく綺麗なように思う。しかし、写真写すとなると空が背景となり、シルエットになるのが玉に瑕である。
この斜面を過ぎると左側が開けた 気持ちのいい原野に出る。そこにはブナの大木が二本ほど立っている。その枝振りが実にいい。先ほど歩いて来たブナ林であろうか、ブナの大木の向こうの山の尾根にはおびただしい ブナの林立がシルエット状に連なって見える。これまで山道から見て感じた規模より相当広い。天城の山の豊かさをつくづくと思う。こんな風景を見るのは長野県の鍋倉山以来である。
行く先にピークが見える。そのピークの尾根にもおびただしいブナの林立のが見える。あそこへ登って行くのかと思ったら、山道は 右を巻きながら裏側に回り込む。そしてそのピークから派生した尾根沿いにトラバース気味に延々とたどってゆく。ブナは常緑樹と共存している混交林であまり見かけたことのない 雰囲気である。尾根の先端に到達すると、珍しく東北のブナのように色白ですらっとしたブナが多い。
いつの間にか天気は回復するどころか気温が下がり今にも雪でも降ってきそう である。猫越峠から1時間15分かかって道標の立つ広々とした大地のツゲ峠に到着する。たどり着いたところは楽園だった、と言いたい所であるが、台地は朽ちたブナの大木 や倒木が点在し、その周りを健全なブナ林が囲むというもので、異様な美しさを感じる。寒々とした空の下で15分ほど写真を写し、この先への思いを断ち切って、仁科峠への帰路についた。 途中、猫越峠手前のあの開けた原野のブナの大木の下で昼食とした。ガスが切れて、すべてがクリアーに現われ、あぁ、こういうところだったのか、と確認しながら 仁科峠へと戻り、山歩きを無事終えた。帰りは西伊豆スカイラインを通り、戸田峠で修善寺梅林の方に下り戻ってきた。


(コースタイム)
自宅5:36==仁科峠(P)8:13〜20−後藤山8:45−展望台9:22〜27−火口湖9:31〜33−(ブナ林9:40〜45)−猫越岳9:46−(ブナ林9:50〜52)−(ブナ林9:56〜58) −(ブナ林10:00〜10:08)−小ピーク−(ブナ林10:10〜13)−猫越峠10:20−(ブナ林10:27〜29)−ツゲ峠11:18〜35 −猫越峠手前の開けた原野のブナの大木(昼食)12:17〜34−猫越峠12:47−猫越岳13:13−展望台13:25−後藤山13:53−仁科峠(P)14:15

(地図)
・昭文社 山と高原地図 「伊豆」



























ツゲ峠
( Canon EOS Kiss DN / SIGMA 17〜70mm DC にて撮影 )



猫越峠先の1014mピーク手引頭 ('07-12-27歩く)--本コースは道がありません。自己責任で歩いてください。
猫越峠を越えて右にブナの大木の林立する斜面を見ながらツゲ峠の方にゆくと、小さな枯れ沢の源流にでる。廻りこんで進むと、形のよい大きなブナが立ち、 大きく開けるてくる。ブナの木の左手遠くには富士山が見え、前方にはブナであろうか木立ちの林立した大きな尾根が立ちはだかっている。 その尾根の左のピークが1014mの手引頭である。
山道は1/25000地形図では稲妻型に登り1014m近くをかすめるように記載されているが、実際は 950〜960mあたりの等高線に沿ったトラバース道がツゲ峠へと続いていて、手引頭への山道はない。今回は1/25000地形図の伊豆山稜線歩道 と書かれた字の豆あたりから広いなだらかな尾根を北東に登っていった。入口はアセビの林に大きなブナが二本立つところである。 入り込んで行くとアセビが減って見通しのよい明るいブナ林の広い尾根となる。少し登ると勾配が緩むがまた登りとなって、昔の道の跡であろうか、浅い 溝が上に向っていたので、それに沿って上がってみた。大体30分ほど登ると広いブナ林の広場になり、手引頭に達した。下りは約20分であった。
いろいろ廻ってみたところ、下のような手引頭の主のようなブナの巨木と出合った。しかし、標識は発見できなかった。 帰ってからネットの友人に尋ねたところ、この巨木の写真の左手奥にあるとのことである。そのうち再度チャレンジして標識を確認したいと 思っている。



( Canon EOS Kiss DN / EF-S17-55mm IS USM にて撮影 )