A.山歩き/2.山紀行/・・金時山

金時山



乙女峠からの富士山

金時神社から乙女峠〜金時山(06-01-10歩く)
冬場は休養の時期として山にはあまり登らないことにしているが、富士山や樹木の写真を写 すのに、雪は少しはあって手ごろな山はないものかと、思案しているうちに、そういえば、山歩きを再開した50才頃登ったきりで、最近の様子が 分からない金時山を思い出し、訪ねてみることにした。
今回は、周回するコースとして、金時神社の駐車場に車を置いて、乙女峠・金時山 ・金時神社と歩いた。これもどちらから廻るか迷うところである。いつもの理由、帰り長々と車道を歩くのがいやで、最初に乙女峠に廻った。 歩いてわかったが、金時山から金時神社への道は分岐からはほとんどが潅木と杉林の道で見るべきものがなく、これは下り専用の道だと思えた。 そんなことで結果的には乙女峠からが正解だった。
身支度して国道135号線を上って行く。約12分ほど歩くと乙女峠入口となる。そこから 木の根が露出して張り出し、石のゴロゴロした歩きずらい杉の植林帯を登って行く。18分ほど登るとやっと植林帯から抜けて、涸沢沿いにコナラ の道をジグザクと上って行く。振り返ると梢の間から神山がシルエット状に見え、その中腹で大涌谷が白い蒸気を噴出している。
繊細なコナラの梢が青空に映えて美しい。ブナの大木も一本であるが現われ、独特の曲がりくねった枝を青空に広げている。木々の写真を 写しながら1時間ほど登ると尾根が近づき、ひょこりと富士山の見える乙女峠に飛び出す。
今日は昼頃から南の風に変わり暖かくなる、との天気予報、もしかして富士山は霞んでいるかもしれないと思ったが、若千、靄っているものの バッチリと見える。先だっては近距離の須走りで富士山を見た。それもダイナミックでよかったが、遠くから見る富士山、裾野の線が綺麗で 、やっぱり富士山は遠くから見る山かもしれないと思いながら写真を写す。
今朝はだいぶ冷え込んだ。長尾山への登りは赤土のむき出したと ころで、普段なら泥んこ状態と思うが、カチカチに凍り、道の脇や土壁にはシモバシラがびっしりとでき、歩くには都合が良い。 長尾山までは周りはずっと潅木の道である。あまりにも潅木が長いので、昔、歩いた時はブナなどあったような気がする、思い違いだったろうか、などと思いながら登る。だいぶ上がってきたようで、振り返ると芦ノ湖が見えるようになり、湖面が光っている。それから さらに登ると傾斜もゆるみ道標の立つ長尾山となる。
この辺から雪が多くなり、アセビや笹など緑が混じる形の良い潅木の気持ちのよい雪道を行く。右手には木々の間から金時山が見えてくる。その手前に 一山見え、まだまだ道のり遠い感じである。道は北の方に向いて下りだすと、突然のようにブナの大木が現われる。
左手にはブナの間から 富士山が見え、写真を写しながら下る。このブナの道がずっと鞍部まで続く。こんなに多かったのかと思うくらい続く。道は北面であることから凍結している。 登ってくる人はアイゼンを装着している。連れは雪国出身(私もそうだが・・・)、これくらいどうって言う事ないとつけないでどんどん進む。 私もつられて進む。氷でつるつるする階段も出てくる。ここら辺でアイゼン装着か、と思ったが、うまい具合に木の根っこが手すりのように張り出てい て、つかまりながら無事通過する。難なく通過するが、足元に気をつけたり、いいアングルの富士山やブナがないかと探したり、写真を写したり忙しい。
鞍部付近になって凍結も少なくなり、足元に気を配らなくて良くて助かる。やがて登りにさし掛かるが、ブナや富士山の写真を写しながら登っているうちに 、長尾山から見たときは相当登り返すように見えたが、意外にすんなり平坦なところに達した。
平坦なところはブナの大木はなくなり、アセビ、笹の混じる潅木 の気持ちのよい雪道となる。潅木の奥をよく見ると、生き生きした若いブナらしい木が多い。丹沢から箱根あたりでは若いブナはほとんど見かけなくなっただけに、 目を疑った。私の観察力もいい加減である、本物であるといいのだが、と思いながら行く。やがて右側が開けて眼下に仙石原が見渡すところに達し、そこより少し下り、金時山へ登り返す。
勾配のきつくなった山道は北面で、しかも標高が高くなり、山道の踏まれた雪が凍結している。いざとなったらいつでもアイゼン装着の覚悟で登る。左手の足柄方向 の急斜面にはブナの古木が多くなる、途中で折れているもの、立ち枯れているものも出てくる。凍結した道も、登りなのでなんとか岩や木々につかまりながら 登り、ようやく平坦なところまで登りきる。少し行くと樹林が途切れ、ガレ場の向こうに天下の秀峰・金時山の看板と山小屋が見える。さえぎるものがなく身を切るような冷たい風が強烈に 箱根側から吹き上げてくる。 帽子を手で押さえながら、一目散に山小屋のあるところまで駆け上がり、富士山の写真を2,3枚写して山小屋に駆け込む。この寒風で誰一人として 外で休んでいない。皆んな小屋の中で、10人くらいは休んでいたろうか。ちようど昼時、おでんを注文して昼飯とする。
30分ほど休んだので、下ることにする。下りの雪の凍結は危険である。あらかじめ小屋の中でアイゼンを装着して山道を下る。すぐ小屋の下の日陰の道が結構凍結している。 登ってきた時のようにそろりそろりと気をつけながら木や岩につかまって進む必要がないので楽である。15分も下ると残雪はなくなる。アイゼンを外して軽い足取りで 下るが、雪道より手ごわい泥のぬかるみの道が待っていた。道はV状に掘れ、避けようもない道はまるで苗代である。覚悟を決めて踏み込む。靴は泥の団子が付き、重くなる。 ようやく金時神社分岐で苗代道もひと段落で一息つく。
右に折れて緩やかに廻り込みながら下ると、平尾山や金時山、下ってきた尾根が見渡せられ、山歩きもフィナーレの雰囲気である。 そこからはほとんど見晴らしの効かない潅木帯を下り、それから杉林へと突入し、黙々と下る。分岐より30分位下るとようやく杉林を抜け、コナラ林となる。 そして、やがて林道に出て横切り、また杉林に入る。そこを緩やかに10分位下ると金時神社の傍に出る。 初めてであるので寄ってみると、今日登った金時山が金時神社の屋根の上に大きくそびえ、まるでご本尊のようであった。

箱根の山で、以前は神山、冠ケ岳にも豊富なブナがあった。ところが昨年の6月歩いたところ、ブナはほとんど無くなっていて、その変わりように驚いた。 一方、金時山も同様に無くなっいるかと思ったが、以前と同様、長尾山寄りにまだ残り、若いブナも育っている(私の判断に間違いないとしたら)ようである。
箱根でのかけがえのないブナ林、 大気汚染と温暖化、環境は厳しいが、どうかいつまでも残っていて欲しいものである。


(コースタイム)
自宅7:07==金時神社(P)8:30〜40−乙女峠入口8:52−乙女峠9:53〜10:00−長尾山10:27−金時山11:35〜12:05−金時神社分岐12:37−金時神社(P)13:45

(地図)
・昭文社 山と高原地図 「箱根」



















Canon EOS Kiss DN / SIGMA 17〜70mm DC にて撮影