A.山歩き/2.山紀行/・・荒船山

荒船山



荒船山の艫岩 Canon EOS kiss DN/EF-S10-22mmにて撮影

荒船山(05-11-08歩く)
荒船山は、他の山に登って周りの山の同定をおこなった時、山頂が平らで船体を思わせる形から、荒船山だ、と直ぐ分かる。 何度、眺めたことであろうか。本当に懐かしい山である。しかしながら一度も登ったことはなかった。神津牧場から荒船山は 昔からハイキングコースとして有名で、いつでも登れる、と思っているうちにいい年になってしまった。
荒船山には内山峠から往復した。昔、内山峠から神津牧場へ行ったことがあり、内山峠まではすんなりと思って いたが、意外にてこずった。下仁田ICから254号線を道なりに行き、旧道があったら登ればいい、と思って行った。 254号線を道なりに行くと、神津牧場方面の林道入口を発見、それが旧道と思って上がっていった。どんどん上がってゆくと丁字路 になって神津牧場を右に分け、左に行く。
そろそろ内山峠かと思ったら、又、丁字路。そんなはずがないと思って、地図を見ようとしたところ、 右手の妙義荒船林道(後から分かった)から消防のはしご車がやってきた。手を上げて道を聞いたところ、丁度遭難事故があって内山峠方面に行 くとのこと。遭難とは物騒な話である。荒船はそんなところだろうか、と思いながら、先導してもらって付いてゆく。 ここが内山峠です、と云ってはしご車は先に行ってしまった。どうも聞き違いで妙義荒船林道の先とかで遭難事故があって帰る途中だった ようである。254号線の旧道入口は神津牧場方面入口のもう一本先のトンネルの手前の右手に上がる道路だった。
内山峠は荒船山に連なる尾根の北西側に位置するためか日陰となり、木々もだいぶ葉を落とし、寒々とした雰囲気である。 尾根を回り込んだりアップダウンしたりして歩いて行くと、晩秋の朝の太陽は低く、目の前の尾根の鞍部らしきところや峠道の ようにV字に開けたところなどから、朝の太陽がサーと差し込んでくる。そして、谷間の冬枯れの木々の繊細な枝をチカチカと光からせ、コナラなどの木立の残り葉 を見違えるように黄金色に染め、地上の落ち葉をも鮮やかに蘇み返させたりする。そしてあの荒船山の舳先の岩場がシルエット状に時々 梢越しに大きく見える。
やがて、屏風のような岩が立ちはだかる。艫岩と思ったら、右に巻いて裏側に回り込む。 尾根に出て日も幾分高くなって明るくなったコナラの山道をしばらく行くと、目の前に今度は艫岩の一部が目の前に高く迫る。 右に回りこんでゆくと垂直の岩場から一筋の水が流れ落ちている。そばには「一杯水」という案内板が立っていた。
ここより艫岩への岩の多い登りとなる。やはり、西側のために日が陰り、寒々とした冬枯れのコナラの斜面を、梯子を登ったり 、橋を渡ったり、岩に刻まれた階段を上がったりしながら、登って行く。約15分ほど登ると、傾斜もゆるみ、 林床が笹の原の冬枯れのコナラ林の山道を行く。船体の上に上がってしまったので、もう周りを覆うものはない。コナラの枝は日差しを 浴びて白く光り美しい。艫岩の見晴台はどこだろうと進んでいくと、道は緩やかに下りだす。アレレと思ったが、そのまま行くとトイレのある東屋が見えてきて、その左が展望台 であった。
天気のいい割には霞んで遠くは浅間山が見える程度である。しかし、その高度感、眼下の紅葉の山並みの広がりはすばらしい。一通り写真を 写して、荒船山のピークである行塚山に向う。どこまでも続く熊笹の原と冬枯れのコナラ林。一箇所だけ、ツルウメモドキの群生地 があり、冬枯れの林に彩りを添えている。フラット道は星尾分岐まで約30分も続き、確かに艫岩の上は船体のようにフラットで あることを実体験する。
星尾分岐から行塚山の登りが今日一番の急登となる。北海道の方に寒気が南下してきているようで、それに向って段々風が強くなって、 ヒューヒューとコナラの梢を鳴らす。約10分ほどであえぎあえぎ登ると小さな祠のある山頂に着く。展望も初谷温泉の方がわずかに開けている程度でほとんど効かない。 ジッとしていると強風のために寒いくらいであるので、すぐ下山する。
黙々と吹きすさぶ風の音を聞きながら艫岩に戻り、幾分風の さえぎられたところで昼食とする。そして、時間があるので、望遠レンズに替えて艫岩から眼下の紅葉と斜光に映し出された黄葉の混じる冬枯れの林立する斜面を 写す。そして元来た道を下った。
ますます風が強くなる。落ち葉が舞い、山道に吹き溜まりを作っている。カサコソというよりガサコソと落ち葉を踏み分けて下る。 西上州の山、今回初めて歩いたが、本当にコナラが多く、冬枯れの林立が美しい。葉っぱの茂っている夏場は視界が効かず息の詰まりそうな山道ではないかと思う。 荒船山を歩いたのは意外にこの時期の晩秋が正解だったかもしれない、それに、コナラが芽吹き、林間にミツバツツジの咲く頃の春先が歩くにはいい時かもしれない、 などと西上州の山のよさを想像しながら下り、無事、荒船山の山歩きを終えた。

この後、どういうルートで帰るか、まだ時間が早いので 中央高速径由として、佐久に向かう。佐久から、小海線沿いに141号線を行く。野辺山の台地に上がるとカラマツの黄葉が真盛りである。 相変わらず強風が吹きすさんでいる。八ヶ岳の方が黄砂で覆われているように煙っている。なんだろう、と思ったら、地吹雪ならぬ、 畑の砂嵐が道路を横断してゆく。車はその中に突入していく。バシバシと砂が車体に当たる。そういうハプニングを経て、清里の清泉寮 に寄りカレーのパックを買って、内山峠から5時間余かかって家に着いた。余談であるが、9月に川俣川東沢渓谷を歩いた時、清泉寮に 寄って買ったカレーが美味しくて、病み付きになり、清里を通るたびに買っている。


(コースタイム)
自宅4:05==あきる野IC5:23==上里SA6:16〜42==下仁田IC7:10==内山峠(P)8:00〜10−一杯水9:27−艫岩9:56〜10:00− 星尾分岐10:29−行塚山10:40〜43−星尾分岐10:52−艫岩11:24〜50−内山峠(P)13:18〜30==長坂IC15:35==相模湖IC16:45==自宅 18:45頃着

(ガイドブック)
・山と渓谷社 「群馬県の山」

(地図)
・昭文社 山と高原地図 「西上州・妙義」





途中の尾根から見た浅間山(上)と艫岩から見た眼下の245号線(中)と山並みの紅葉(下)